映画祭レポート⑪/プロフェッショナルトーク スタジオドリアン 押山清高監督

 映画祭2日目、『電脳コイル』や『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』、『鋼の錬金術師 嘆きの丘の聖なる星』など多数の人気作に携わり、2016年には『フリップフラッパーズ』を監督、現在は株式会社ドリアンの代表取締役を務める押山清高氏をお招きし、プロフェッショナルトーク スタジオドリアン押山清高監督「『SHISHIGARI』にいたるまで」が開催された。
 

 
 『SHISHIGARI』は当映画祭の日本コンペティション部門にノミネートされた17分の短編アニメーション作品。監督、脚本、絵コンテ、作画など、制作工程のほとんどを押山氏が一人で担っている。このトークプログラムでは、押山氏の来歴を振り返るとともに、絵コンテや原画などの制作素材を豊富に交えながら、『SHISHIGARI』の制作過程を解説した。
 

 
 押山は制作スタジオ・ジーベックでアニメーターとしてのキャリアをスタートした後、『電脳コイル』では作画監督、『スペース☆ダンディ』では脚本・演出、『フリップフラッパーズ』では監督を務めるなど、仕事の幅を徐々に拡大してきた。それぞれの役職ごとに積んだ経験が、作業スピードの向上や視野の広がりに繋がり、『SHISHIGARI』をほぼ個人で手がけることができた下地になったのではないかと振り返る。
 

 
 背景美術はエメリック・ケビン氏、撮影・編集は泉津井陽一氏に依頼したが、自分一人で手がけた他の工程は、セクションごとの境目が曖昧になるため、カットごとに自分にとって最も効率的なワークフローを模索していったという。「集団での作業となると、個人が表現したいものをダイレクトに表に出すことは難しい一方、共同作業だからこそ生み出せるものや楽しさもある。それならば、“1人”でも“みんな”でもやれる制作スタイルで探ってみたかった」と、『SHISHIGARI』に取り組むにあたっての意気込みを述懐した。
 
 また押山は『SHISHIGARI』で、TVPaint Animation(フランス製のアニメーション制作ソフトウェア)とCLIP STUDIO PAINT(日本はセルシスによるイラスト・マンガ制作ソフトウェア)という2つのデジタルツールを駆使し、絵コンテから作画・仕上げまでを行ったという。こうしたデジタル環境の整備も、少人数での制作がやりやすくなった一因だと述べる。
 

 

 
 「自分は元々1人で何でもできるタイプではなかったが、人との共同作業を通じて、1人でこなせるだけのスキルを身につけることができた。かつてはアニメーションの個人制作など遠い夢だったが、今はデジタルツールがある。アニメーションの制作環境の変化とともに、これまでの手法にとらわれない新しいアニメーションの作り方を模索してもいいのではないか」と語る押山。『SHISHIGARI』は長編化へ向けても準備が進行中だという。アニメーション制作の新たな地平を切り開く押山監督の果敢な挑戦に、客席からは惜しみない拍手が贈られ、セッションは大盛況のなか締めくくられた。